あたい、テン！
ここは、いまのあたいのおうち、ねこりぱぶりっく！

あたいがもともといたところは、人間のお家のお庭。
いつも、ごはんをくれる人がいたから、あたいたち一族の縄張りにしたの。

ビッグマムくるみや、ボス猫ナッツにいちゃん、ふわふわアーモンド、そのほかたくさんのあたいの一族が、ここを縄張りにしたのよ。
だからこの一帯は、あたいと同じ、茶白の猫がたぁーくさんいたわ。

なかには妊娠してる子もいた。
もうすぐお腹の赤ちゃん生まれちゃうんじゃないかしら、って思っていたころ、見知らぬ人間がやってきた。

それが、いま毎日ごはんをくれる「ねこりぱぶりっく」の人だった。
あまりにもきょろきょろ見るもんだから、気になっちゃって気になっちゃって。
ほら、あたいってとっても好奇心旺盛じゃない？
見てよ、そのときの写真、どれを見ても、あたいカメラ目線なんだから。

その人間がきて、数日したら、「捕獲部隊」っていう人間たちがたくさんきて、あれよあれよとあたいたちは、一家そろって大移動。
こうして、このお家にやってきたのよ。

あたい、ここにくるまで、あたいたち一家のことしか知らなかったから、びっくりしちゃったわ。
いろんな猫がいるんだもん。

最初はケージに入れられたから、あたいも散策ができなかったんだけど、それからカフェデビューしたのよ。
カフェデビューする子はいきなりお部屋にフリーにならずに、数日ケージのまま過ごして、問題がなければケージの外に出れるの。

だけど、あたいは、気になることだらけでね。
ケージの隙間から、お外にいる猫をちょんちょん触ってみたり、何か向こうのほうでおもちゃを動かして遊ぶ人間がいたら、届かないけどエア猫パンチもくらわしたわ。

茶白の猫たちと、そのほかの色の猫たち、触ってみたら同じ感触なのかも試してみたわ。
それであたいは学んだの。
感触は色で決まるんじゃなくて、個人差ね。

あたいのこの綺麗な茶白の艶々な毛も、本当は触ってみたら、とっても気持ちいいのよ。
でも、あたい、まだ「人間に触られない」ゲームを続行中で、触ろうとしたら、こう、さっと動いて避けるのが楽しいのよ。

そうそう、あたいの名前「テン」っていうのは、どうやら似ている子がいるらしいの。
何か「イタチ」っていう動物の仲間に、「テン」っていうのがいるらしくて、あたいがそれに似てるらしいの。
人間のみなさん、テンって知ってる？
あたい、自分の名前の由来なのに、テンって見たことないから、１回見てみたいなぁ。

どうやら、そのテンもすばしっこくて、あたいみたいにスリムらしいわ。
あたい、ぜーんぜん太らないの。
でもそれはなぜかって、ごはん食べるときに、他のことが気になっちゃうのよぉ。
お隣の子がごはん食べてたら「あっ、それはあたいと同じやつ？ちょっと匂い嗅がせて。あ、同じね。」
人間がごはん配ってたら「あと何個配るの？あたい、お手伝いしたほうがいい？」
ごはん食べない子がいると「どうしたの？なにが嫌だった？」
あまりにもバクバク食べてる子がいると「あらぁ、あなたとってもよく食べるのね」
って具合にね。
あたい、好奇心旺盛だから、ごはんも集中できなくて、ちょこまか動いてるの。

そんなあたいの姿を見て、ここの人間は
「よく動く子だなぁ」
なんて言わずに、
「テンはいっつも、楽しそうだね」
って笑ってくれる。

そうそう、あたいの目なんだけど、ちょっとあたいの一族は、お目目が弱い子が多いの。
ケージに入れられていた時、容赦なく毎日目薬をさされたりしたんだけど、あんまりよくならなくてね。
きっと小さい時に、風邪をひいたり、寒い場所にいたから、お目目がちょっと悪くなっちゃったんじゃないかな、って思ってる。

でも、あんまり昔のことは思い出せないんだ。
だって、ここは毎日見るものがたーくさんあって、とっても楽しいから。
そして、とっても忙しいわ。
たまにいきなり始まる喧嘩なんかも、思わず走って野次馬しにいっちゃう。えへ。
だから、昔のことを思い出している暇なんて、あたいにはないのよ。
あたい、ここでとっても幸せなんだけど、そんな昔のあたいも、まるっと受け止めてくれる人間を、ここで探しているの。

そんな人を見つけたら、あたいの自慢の艶々な毛を触らせてあげようと思うわ。
きっとその人との生活は、ここでのことを忘れちゃうぐらい、楽しいに決まってる。

あたい、テン。
あたいの艶々な毛を触った人間に、ビビビッ！ていう運命を感じてもらうため、念入りに、念入りに、今日も毛を整えておくわ。
だって、そんな出会いって、人生に何度もないでしょう？
あたい、運命を信じてるのよ。